2023年10月21日EOLC研修 セミナー2の質問について回答です

【質問1】

東京医科歯科大学看護教員の菅野と申します。第1回に引き続き、貴重なご講義をありがとうございました。特にケアの質について大変勉強になりました。そこで、2点質問があります。患者さんが亡くなられた後、ケアの質を評価するために調査を行われているとのことですが、①この調査は、関わった医療・介護施設が独自で行うものなのか、公的または民間の機関が調査を行うのか、調査主体について知りたいです。また、②調査結果をどのようにフィードバックされるのか、もう少し具体的に教えてくださると大変嬉しく思います。

【回答】

少し複雑になりますが、満足度調査についてから説明させていただきます。保険からの支払いは、一般的なものに加え良い医療に達していると評価される場合のインセンティブと、一定の基準に基づいているかどうか(コンプライアンス)の2つの要素が考慮されることがあります。EOLに限らず満足度調査はさまざまな病院評価の際使われています。これは民間の団体によるもので、Medicareなどもどれを使わなければならないとは決めていませんが、何らかの全国区レベルのベンチマークがあるものを使わなければならないので、HCAPS® のようなものがつかわれることが多いです。費用は病院が負担しますが、全国区レベルのデータと比較が可能でよい実践を行えていいるのか示すことができます。Magnet® hospitalの申請書類でもその病院のパフォーマンスを証明するために使われます。
個々のホスピスが、ホスピスと名乗るためには、その認可を持っていることも必要です。この認可を継続するためコンプライアントであることが必須です。日本とは違った仕組みなのであまり触れていませんが、ホスピスケアには2つのレベルがあります。General Inpatient:GIP(EOLの急性期ケア:症状マネージメントのみで延命に関するものは含まれない)もしくはRoutineケア(症状は安定しているとみなされるレベル)。このため、延命処置を行っておらず安楽に集中したホスピスケアを行っているのかどうか(Hospice Eligibility)、とGIPレベルのケアを必要としているのかどうか(GIP Eligibility)という二つのコンプライアンスが必要です。例えばホスピスケアをしているとMedicareに申請しているのに実は透析を行っているのノンコンプライアントとみなされ、Medicareから不正申請とみなされることもあります。

EOLにおける実践の評価は、医療・介護施設で、独自もしくは全国レベルで標準化して存在するデータの療法を使いますが、この時QIの概念をもって看護が中心となって行っていく必要があります。QIの概念は進化していて、私はかなり前からエビデンスに基づいたQI(EB-QI)を指導・教育しています。ことらは更に複雑ですので、今後講義などのご希望があればお知らせください。ご質問ありがとうございました。


【質問2】

本日は2回にわたる貴重なご講演ありがとうございました。大学で在宅看護学の教員をしております山本と申します。ピンポイントの質問になってしまいますが、私のこれまでの看護経験もふまえ「不穏」になった時にご家族に疾患の予後の説明をしていても、変わりはてたご本人の姿に対する動揺や、本来の苦痛の軽減と違うのではないかといったとまどいがあるかと思います。その際、どのような対応をされているのか、お伺いできればと思います。よろしくお願いします。

【回答】

ご質問ありがとうございます。初めに用語を整理させていただいたうえで、回答させていただきたいと思います。ここではご家族が動揺する様子を不穏と表現なさっているように思いましたので、医療用語での患者の症状としての不穏ではなく、ご家族が亡くなりつつある方を見ていく中での動揺に対する対応について、お返事をさせていただきたいと思います。
ご指摘があった通り、EOLケアの介入はこれまでの医療の常識とは大きく違った介入です。ですから、この点ではこれまでの延命・完治を目指すことのみを正義とみなした教育を受けてきた医療従事者にとっても、哲学的にあまりに違いすぎて、追いつけないというのが現実です。しかしながら、なんだかソフトで根拠がないと思われてきたしかし倫理的に正しいのではないかと思われてきた考え、例えば「この年でそこまでするのはかわいそう」などの考え方は、逆にEOLケア理論によって科学的に支えられています。これを踏まえたうえでご家族とも対応していくことが必要です。ミディアなどで、モルヒネの使用を安楽死などと誤って解釈されたものにより、ご家族は不安に駆られます。講義の中でも取り込んでいますが、「現実的な予後の理解と予測されること」をしっかりと、ご家族と共有することが必要です。これは私たち医療従事者が科学的根拠をもって説明する義務と教育をしっかりと行える力が必須です。そのうえでケアによって達成するべきこと(ケアのゴール)についてしっかりとご家族とコミュニケーションを持つことが必要です。さてここまでを抑えた上で、人が亡くなるということは、感情的に非常につらい喪失体験であるということを私たちも理解していることを表現することは必要です。多くの方々が「この日が来ることはわかっていた」と言っても、だからと言ってその人を失うことに悲しみを、喪失感を実感することは当たり前なことなのだということを、日々忘れないようにしています。私たちも思いやりをもって真摯に接することを忘れてはいけないことを常に心にとめて実践しています。

以上です。

来年度も、大勢の皆様のご参加をお待ちしております。